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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)813号 判決 1966年1月21日

上告人

村瀬清孝

上告人

村瀬春子

右両名訴訟代理人

下飯坂潤夫

下飯坂常世

被上告人

高崎とみ

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人下飯坂潤夫の上告理由第一点について。

裁判上の自白に関する法則が養子縁組事件に適用されず、裁判所は自白に拘束されることなく真実を発見すべきことは、論旨指摘のとおりである。しかし、養子縁組事件においても、当事者が自白すれば、裁判所は、自由心証によつてこれが真実であるかどうかを判断し、真実と認めれば、これを一証拠原因として事実認定の資料とすることを妨げられるものではない。原判決ならびにその引用する第一審判決は、このような趣旨において所論自白を事実認定の資料にしたものと解せられなくはないから、論旨は、結局理由なく、採用することができない。

同第二点について。

被上告人は「本件養子縁組届出は、上告人両名が村瀬いの印鑑を冒用して本人の意思に基づかずしたものであつて、無効である」と主張したのに対し、原判決ならびにその引用する第一審判決は、右主張どおりの事実を認定していること明らかであるから、いわゆる当事者の主張していない事物の利益を被上告人に帰せしめた違法があるとの論旨は理由がない(なお、人事訴訟手続法一四条・二六条参照)。また、原判決の引用する第一審判決の確定した事実は明確であるから、論旨後段も採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

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